ショートメッセージ【ヤコブ③】
~ヤコブの結婚~
創世記29-30章
ベテルの野で一夜を過ごしたヤコブは、旅を続けて、ようやく目的地のハランにつきます。野に一つの井戸があって羊に水を飲ませるために集まった人々がいました。
ヤコブはそこで早速、母リベカの兄、おじのラバンのことについて聞いています。
彼らは、ラバンのことを知っているだけではなく、ラバンの娘ラケルがやってくると言います。
本日は、創世記29章と30章から、ヤコブの結婚について3つに分けてお話しします。
1、ヤコブ、ラケルと会う
創世記29:9-11
29:9 ヤコブがなお彼らと語っている時に、ラケルは父の羊と一緒にきた。彼女は羊を飼っていたからである。
29:10 ヤコブは母の兄ラバンの娘ラケルと母の兄ラバンの羊とを見た。そしてヤコブは進み寄って井戸の口から石をころがし、母の兄ラバンの羊に水を飲ませた。
29:11 ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。
ヤコブはラケルが来ると、群れの皆が集まってから水を飲ませるという彼らの習慣を無視して、井戸の口に蓋をしていた大きな石をころがし、ラケルの連れてきた羊に一番に水を飲ませます。そして、ラケルに口づけし、声をあげて泣いたのです。
1人で何日も野宿し、不安と孤独の中にいたヤコブでしたから、その心情は理解できますが、ここに余りにも自分本位なヤコブがいます。
創世記24章のことを思い出していただきたいのですが、イサクのお嫁さん探しに出たアブラハムの年長のしもべも井戸で、ヤコブの母となったリベカと出会いました。このしもべは、まず神さまに祈り、そして途中でも祈り、最後にも祈っています。
しかし、ヤコブは、神さまの導きを求める前に自分の思いで行動しています。ヤコブの信仰者としての未熟さが描かれています。
モーセはイスラエルの民に、また、神さまは私たちに、神さまの導きを求める大切さを教えているように思えます。
2、ヤコブ、だまされる
29:13 ラバンは妹の子ヤコブがきたという知らせを聞くとすぐ、走って行ってヤコブを迎え、これを抱いて口づけし、家に連れてきた。そこでヤコブはすべての事をラバンに話した。
29:14 ラバンは彼に言った、「あなたはほんとうにわたしの骨肉です」。ヤコブは一か月の間彼と共にいた。
ラケルは、ヤコブに突然口づけされ、目の前で声をあげて泣かれ驚いたことでしょう。さらに、彼がいとこであることを知って、さらに驚き、走って帰り、父のラバンに知らせました。
ヤコブを歓迎して迎え入れたラバンは、ヤコブにこう切り出します。
29:15 時にラバンはヤコブに言った、「あなたはわたしのおいだからといって、ただでわたしのために働くこともないでしょう。どんな報酬を望みますか、わたしに言ってください」。
ラバンはヤコブから聞いて、彼が自分の家に戻れない事情を知りました。ヤコブは、兄エサウと違って天幕に住み羊飼いをしていて、経験があり即戦力でした。また、ヤコブの抜け目のなさをラバンは見抜いていたのでしょう。1ヵ月過ごすうちに報酬を払ってでも彼をとどめたいと考えます。ラバンはヤコブがラケルに心を寄せていることを知るとそれを利用して自分の利益を得ようと考えます。
ヤコブは、財産よりも結婚のことが気がかりでした。旅立つ時に父イサクからラバンの娘を妻にめとるようにと言われていました。
29:18 ヤコブはラケルを愛したので、「わたしは、あなたの妹娘ラケルのために七年あなたに仕えましょう」と言った。
29:19 ラバンは言った、「彼女を他人にやるよりもあなたにやる方がよい。わたしと一緒にいなさい」。
アブラハムのしもべは、多くの高価な品を結婚のために備えていましたが、何もないヤコブには、労働しかありませんでした。ラバンは、思惑通り無報酬でヤコブの7年の働きを得ます。7年は当時、奴隷が主人に仕える年限(区切り)であったようです。しかし、ラバンの悪巧みはそれで終わりませんでした。
29:23 夕暮となったとき、娘レアをヤコブのもとに連れてきたので、ヤコブは彼女の所にはいった。
29:25 朝になって、見ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った、「あなたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺いたのですか」。
29:26 ラバンは言った、「妹を姉より先にとつがせる事はわれわれの国ではしません。
29:27 まずこの娘のために一週間を過ごしなさい。そうすればあの娘もあなたにあげよう。あなたは、そのため更に七年わたしに仕えなければならない」。
花嫁は、ベールでおおわれたまま夜連れてこられます。ヤコブは、それがラケルだと思い込んでいました。抜け目ないヤコブでしたが、自分が騙されるとは思いもしなかったでしょう。自分より上手のラバンにしてやられたヤコブは、さらに7年間無報酬で働くことになります。
エサウをだましたヤコブは、おじのラバンに騙されます。しかし、ラバンもこのあと、娘たちに背かれてヤコブに従い去っていきます。人間の欲がはらんで罪を生み、罪が罪を重ね、人の間に悲哀を生む罪の結果を聖書は私たちに教えています。
ヤコブは、自分が騙されて、はじめて人を欺くことの非、その罪の重さを味わうことになりました。相手の悪に対して悪で応じることに解決がないことを、身をもって教えられたヤコブでしたが、イスラエルの民も私たちにもそのことを教えられているのです。
3、ヤコブ、2人の妻の争い
ラバンの悪巧みによって、ヤコブは二人の妻を迎えることになります。それがレアとラケルの姉妹の争いと家庭の不和をもたらします。
29:31 主はレアがきらわれるのを見て、その胎を開かれたが、ラケルは、みごもらなかった。
ヤコブは姉のレアよりも妹のラケルを愛していました。神さまは、そんなレアを顧みて、続けて4人の子供を与えられました。子供が与えられたことによってレアは慰めを得ます。
一方、ラケルは夫ヤコブの愛を受けていましたが、姉レアの子供の成長をみて、夫の愛が、子供たちや姉のレアに移ってしまうのではないかと気が気ではありませんでした。そしてラケルは姉を妬むようになります。
30:1 ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った、「わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死にます」。
ラケルのねたみは、姉との比較によって生じています。姉が悪いことをしたわけでも、自分に対して悪を働いたわけでもありません。姉のレアには子供が生まれるのに、自分には生まれない。もちろん子供が生まれないのは妻として大変悲しいことです。しかし、ここでのラケルは、子供のことで自分よりうまくいっているレアに対しての怒りで自制心を失い、夫ヤコブに不可能な要求をしています。
人のなかに生まれながらにしてある罪の一端が明らかにされています。ラケルは、夫ヤコブに怒られて、じぶんのつかえめ(女奴隷)をヤコブに与え、子供を授かろうと考えます。
かつて、アブラハムの妻サラが、自分の女奴隷ハガルをアブラハムに与え子供を得ます。これは神さまのみ心ではありませんでしたが、自分で神さまのご計画に従おうとしたその動機は悪くありませんでした。
しかしラケルの場合は、ただ姉へのねたみ、対抗心からのことです。
神さまの御心云々のまえに、この無茶な要求をヤコブは遠ざけて、ラケルを静めて家庭を治めるべきでした。しかし、ラケルの勢いに押され、神さまの導きを求めることもなく、行った結果は、ラケルとレアの争いに火を注ぐことになります。
30:8 そこでラケルは、「わたしは激しい争いで、姉と争って勝った」と言って、名をナフタリと名づけた。
レアはこれまでの子供に、神さまのことを中心にした名前を付けていましたが、ラケルのつけた名前は、全く信仰的なものではありませんでした。
30:9 さてレアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、つかえめジルパを取り、妻としてヤコブに与えた。
しかし、ラケルが女奴隷によって子供を得ると、ラケルよりも信仰的であったレアもラケルの手段を選ばない行動に対抗して、出産競争に入っていきます。罪が罪を不信仰が不信仰を生み、いまやヤコブの家庭は信仰の家族とは呼べないほどに乱れていました。
ヤコブの家庭はアブラハム、イサクの信仰と祝福を継承するためのものでした。ラバンの悪巧みで思いもよらない結果になりました。神さまは、ヤコブに祈って導きを求めこの争いをおさめることを期待されていたのです。
聖書は、一夫多妻の問題を取り上げ、また、たとえ一夫一婦制であっても、嫉妬や争い、口論に満ちた家庭の問題を戒めています。そして、悪に悪を、不信仰に不信仰を、争いに争いを重ねるのではなく、神さまに導きと知恵をいただいて、治めていくことの大切さをわたしたちに教えています。聖書は家庭をおさめるための導きの書でもあります。
2022年5月1日(日)
ニホン・ネットキリスト教会
メッセンジャー:香川尚徳師
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教会は、人がこの世に生まれた時から天に召される時まで、すべての時が神の導きと祝福の内にあることを実感するところです。そして、聖書は人生の処方箋とも言えます。人生に行き詰まりを感じることや、疲れをおぼえる時は、先ず休むことです。明日のことは、明日にならないとわかりません。明日に備えてグッスリ眠るほうが健康的です。
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