■エリザベス女王の葬儀で歌われた讃美歌■

 皆さん、こんにちは。「聖書からのワンポイント」の清水浩治です。今日のお話のタイトルは、「主はわたしの羊飼い」であります。

 エリザベス女王の葬儀にて、多くの讃美歌が歌われました。
 その中の一つが、“ The Lord’s My Shepherd ” 「主はわたしの羊飼い」でありました。この曲は、日本の讃美歌第二編の中にも含まれていまして、今日のBGMで流しています。

 キリスト教の葬儀においては、神を褒めたたえるために讃美歌を歌います。同時に、亡くなった本人の愛唱歌が歌われます。葬儀で歌われたこの曲は、エリザベス女王がフィリップ殿下と結婚した時にも、結婚式の中で歌われた賛美歌でした。つまり女王の愛唱歌であったのです。

 この曲のタイトルは、旧約聖書の詩篇23篇から来ています。詩篇23篇の書き出しが「主はわたしの羊飼い」なのです。人にとって、主なる神が羊飼いであるとは、修辞法を使っての言いまわしです。これを隠喩法と呼んでいますが、聖書の中には多く用いられている修辞法であります。本来の意味ですが、主なる神は、私にとって羊飼いのような存在である、ということです。

 詩篇23篇全体を、区切って見ていきましょう。
「主はわたしの羊飼い。わたしは乏しいことがありません。主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわ(水際、みぎわ)に伴われます。」
 この詩篇の作者、ダビデはもともと彼自身が羊飼いでしたから、彼がベツレヘムの周辺で羊を世話したことを通して、神は神を信じる民の世話をし、必要を満たし、守ることを知っているのです。

 詩篇23篇を読み進めます。
「主はわたしの魂を生き返らせ、御名のゆえに、わたしを義の道に導かれます。」
 ここでは、主なる神に従うものに対して、神は赦しと救いを与え、義の道、つまり神にあって正しい道へと導いてくれることがわかります。それはちょうど、羊飼いが羊を安全に導くために、通るべき道を知っていて、その道に羊を導くのと一緒です。

 詩篇23篇の次の内容をお読みします。
「たとえ死の陰の谷を歩むとしても、わたしはわざわいを恐れません。あなたがともにおられますから。あなたのむちとあなたの杖、それがわたしの慰めです。」

 人生は、最初から最後まで順風満帆とはいきません。むしろ逆のケースが多いわけです。誰しも人生の危機と言えるような、大変で、苦しい場面に直面します。しかし、その中にあっても、羊に羊飼いが常に伴うように、神がわたしと共におられるという確信ゆえに、恐れる必要がないのです。

 羊飼いがその働きゆえに持っているものとして、むちと杖があります。むちを使って襲ってくる野生の動物から羊を守ります。そして、杖を使って、羊の群れをコントロールしていくのです。

 詩篇23篇の終わりの部分をお読みします。
「わたしの敵の前で、あなたはわたしのために食事を整え、わたしの頭に油を注いでくださいます。わたしの杯はあふれています。まことに、わたしのいのちの日の限り、いつくしみと恵みとが、わたしを追って来るでしょう。わたしは、いつまでも、主の家に住まいましょう。」敵が目の前に迫っていれば、食事をしている場合ではありません。しかし、そのような状況下であったとしても、神は必要を満たしてくれることがわかります。

 神のやさしさ(いつくしみ)と、神から与えられる一方的な祝福である恵みは決して自分を離れることがなく、一生、自分を追いかけてくるように与えられるとダビデは述べ、自分は神のおられる主の家に住み続ける、と生涯神と共に歩む決心を、信仰の表明として語っているのです。

 本来の詩篇は歌うものでありましたが、讃美歌「主はわたしの羊飼い」は、この詩篇のことばをそのまま使って歌っています。自分が羊の立場で、羊飼いのような神の守り、祝福、そして導きの中で、生涯を送ることができたらなんと幸いなことでしょう。新約聖書のキリストのことばで、お話を締めくくりたいと思います。
「わたしは良い牧者です。良い牧者は羊たちのために命を捨てます。」(新約聖書 ヨハネによる福音書10章11節)

 お聴きいただきありがとうございます。また、来月のこの時間に「聖書からのワンポイントでお会いしましょう。

2022.10.14
ラジオ・ティーチング・ミニストリー「聖書からのワンポイント」
タイトル「エリザベス女王の葬儀で歌われた讃美歌」
牧師:清水浩治

旧約聖書 詩編23篇 (口語訳)
ダビデの歌
23:1 主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。
23:2 主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわに伴われる。
23:3 主はわたしの魂をいきかえらせ、み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
23:4 たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません。あなたがわたしと共におられるからです。あなたのむちと、あなたのつえはわたしを慰めます。
23:5 あなたはわたしの敵の前で、わたしの前に宴を設け、わたしのこうべに油をそそがれる。わたしの杯はあふれます。
23:6 わたしの生きているかぎりは/必ず恵みといつくしみとが伴うでしょう。わたしはとこしえに主の宮に住むでしょう。