素直に読む【ヨハネの黙示録_24】
ヨハネの黙示録17章1-18節
「子羊の勝利」
〈はじめに〉
今回の17章では、神さまがあの手この手で救いを与えようとしても頑なに拒否し続けた者たちに対する裁きを特別に取り上げて幻として見せています。
〈本文〉
ヨハネの黙示録16章1節を読みます。
17:1 それから、七つの鉢を持つ七人の御使のひとりがきて、わたしに語って言った、「さあ、きなさい。多くの水の上にすわっている大淫婦に対するさばきを、見せよう。
水の上にすわっている《大淫婦》が登場します。この女性が《さばき》の対象です。すでに15節で、水があらゆる民族、群衆、国民、国語だと説明されています。大淫婦についてはさまざま解説がありますが、この大淫婦は、「この世」との理解でよいと思います。
続けて、ヨハネの黙示録16章2節を読みます。
17:2 地の王たちはこの女と姦淫を行い、地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」。
つまり《大淫婦》は、神さまを受け入れず、サタンの支配下にあるこの世の中なのです。
地の王たちがこの女と姦淫をするというのは、まことの神さまに背を向け、他の神々を拝む偶像礼拝を示し、人々がそれらの偶像に惑わされている様子が《酔いしれている》と表現されています。
ヨハネの黙示録16章3-6節を読みます。
17:3 御使は、わたしを御霊に感じたまま、荒野へ連れて行った。わたしは、そこでひとりの女が赤い獣に乗っているのを見た。その獣は神を汚すかずかずの名でおおわれ、また、それに七つの頭と十の角とがあった。
17:4 この女は紫と赤の衣をまとい、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものと自分の姦淫の汚れとで満ちている金の杯を手に持ち、
17:5 その額には、一つの名がしるされていた。それは奥義であって、「大いなるバビロン、淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」というのであった。
17:6 わたしは、この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た。この女を見た時、わたしは非常に驚きあやしんだ。
17章3節の《荒野》は、12章で太陽を着た神の民をあらわす女性が逃げて、神さまに守られていた場所でした。この17章の女性は、その女性とは違って大淫婦を指しています。大淫婦であるこの世は常に神の民を迫害しようと追いかけることが示されています。
同じく17章3節に出てくる《獣》は、13章に登場した、国や政治的指導者を象徴する獣と同じものだと考えられます。この《獣》を、当時のローマ帝国の皇帝や、その支配下にあった王たちに具体的に結びつけて説明する解説もあります。
しかし、そこまで細かく考えなくても、ローマ帝国のように信仰者を迫害し、その苦しみの血を喜ぶような恐ろしい国が現れることを示していると受け取れば十分でしょう。
ヨハネの黙示録16章6-14節を読みます。
17:6 わたしは、この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た。この女を見た時、わたしは非常に驚きあやしんだ。
17:7 すると、御使はわたしに言った、「なぜそんなに驚くのか。この女の奥義と、女を乗せている七つの頭と十の角のある獣の奥義とを、話してあげよう。
17:8 あなたの見た獣は、昔はいたが、今はおらず、そして、やがて底知れぬ所から上ってきて、ついには滅びに至るものである。地に住む者のうち、世の初めからいのちの書に名をしるされていない者たちは、この獣が、昔はいたが今はおらず、やがて来るのを見て、驚きあやしむであろう。
17:9 ここに、知恵のある心が必要である。七つの頭は、この女のすわっている七つの山であり、また、七人の王のことである。
17:10 そのうちの五人はすでに倒れ、ひとりは今おり、もうひとりは、まだきていない。それが来れば、しばらくの間だけおることになっている。
17:11 昔はいたが今はいないという獣は、すなわち第八のものであるが、またそれは、かの七人の中のひとりであって、ついには滅びに至るものである。
17:12 あなたの見た十の角は、十人の王のことであって、彼らはまだ国を受けてはいないが、獣と共に、一時だけ王としての権威を受ける。
17:13 彼らは心をひとつにしている。そして、自分たちの力と権威とを獣に与える。
17:14 彼らは小羊に戦いをいどんでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らにうち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る」。
ヨハネは17章6節で、大淫婦の姿を見たとき、とても驚きました。
それは、この女が神に敵対し、聖徒たちの血を流す恐ろしい存在に見えたからです。
しかし、御使いはヨハネに向かって、《なぜそんなに驚くのか》と語りかけます(17章7節)。
その理由は、14節にある通りです。つまり、小羊であるイエス・キリスト――《王の王、主の主》であるお方が、この巨大で凶暴な敵を、いとも簡単にと打ち破ることが約束されているからです。
そして、信仰者たちもまた、小羊と共に勝利するのです。だから、恐れる必要はない、安心しなさいと告げられているのです。
御使いが明かす奥義に目を向けると、七つの頭とは七人の王を指しています。これは古代から続いてきた支配勢力、つまり、バビロニア、アッシリア、新バビロニア(カルデア)、メデア・ペルシャ、ギリシャ、そして当時のローマ帝国、さらにこれから現れる次の国を指していると考えられます。
さらに、これまでの支配勢力のうちの一つが形を変えて再び現れることが《第八のもの》として示されています(17章11節)。
また、《十の角》は十人の政治的指導者を象徴しています(17章12節)。
これは、必ずしも一人の絶対的な支配者ではなく、ローマ帝国のように多くの地方の指導者たちが、それぞれの地域で皇帝のように振る舞い、信仰者を迫害する姿を指していると考えられます。
いずれにしても、この世(大淫婦)は、国家やそのような形態をとって、サタンの支配のもとにあり、信仰者を追い詰め、迫害し、神さまを信じない人々を惑わし続ける存在です。
このような動きは、終末に至るまで繰り返されると示されています。
しかし、御使いがここで最も強調しているのは、次のことです。
17:14 彼らは小羊に戦いをいどんでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らにうち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る」。
と言うことだから、安心しなさい。ということです。
ですから、私たちは、恐れず、安心して歩み続けることができるのです。
ヨハネの黙示録16章15-18節を読みます。
17:15 御使はまた、わたしに言った、「あなたの見た水、すなわち、淫婦のすわっている所は、あらゆる民族、群衆、国民、国語である。
17:16 あなたの見た十の角と獣とは、この淫婦を憎み、みじめな者にし、裸にし、彼女の肉を食い、火で焼き尽すであろう。
17:17 神は、御言が成就する時まで、彼らの心の中に、御旨を行い、思いをひとつにし、彼らの支配権を獣に与える思いを持つようにされたからである。
17:18 あなたの見たかの女は、地の王たちを支配する大いなる都のことである」。
17節では、歴史も世界もすべて、神さまの完全な支配のもとにあることが明らかにされています。
国王たちや、それに協力する指導者たちの心を、神さまが一つにまとめられ、獣に象徴される大国もまた、神さまのご計画に従って立ち、動かされているのです。
もし神さまがその働きをされなければ、16節に示されているように、指導者たちはすぐに利己的になり、互いに争いを始め、国はたちまち自滅してしまうでしょう。
一見すると、世界の歴史は、その時代ごとに指導者たちの都合によって動いてきたように見えます。しかし、その背後では、常に神さまが確かに働いておられます。
そして、これから先、世界が終わりに向かって進んでいくときも、これまでと変わらず、すべては神さまのご計画の中で進んでいくのだと、ここで示されているのです。
〈まとめ〉
今回の17章の中心は、やはり14節の言葉だと言えるでしょう。
終わりの時代には、当時のローマ帝国よりもはるかに強力で恐ろしい、この世の悪しき勢力が現れると示されています。
しかし、それでも小羊であるイエス様にとっては、そのような敵を滅ぼすことは、たやすいことなのです。
なぜなら、イエス様こそ《王の王、主の主》であり、どんな国も、どんな指導者も、イエス様に勝つことはできないからです。
ヨハネも、終わりの時に現れるこの巨大な悪の勢力のすさまじさを見せられたとき、驚き、ひるみました。
本当にこんな恐ろしい世に対抗できる者がいるのだろうか、と思わされたのです。そんなヨハネに、御使いは「恐れることはない」と語りかけました。
ここで示されているのは、幻を見なくても、御使いの言葉だけで、小羊の勝利と、それに続く信仰者たちの勝利を確信できるということです。
サタンは、私たち信仰者を取り囲み、隙をうかがい、落胆させ、イエス様から引き離そうと働きかけてきます。しかし、私たちがすでに小羊の勝利を確信しているなら、たとえどんな攻撃を受けても、その歩みは揺らぐことがありません。
だからこそ、今日の14節の言葉をしっかり握りしめましょう。
小羊であるイエス様は、どんな悪しき勢力に対しても《王の王》として必ず勝利し、そして、イエス様につながっている私たちも、確実に勝利へと導いてくださいます。
もし、この勝利への確信を持たないなら、私たちは迷える羊のように、不安定な歩みになってしまいます。
大切なのは、自分の感覚や気分ではなく、今回学んだこの御言葉をしっかり心に刻み、世の勢力にひるまない勝利の信仰者として歩み続けることです。
2025年5月16日
香川尚徳牧師の素直に読む【ヨハネの黙示録_24】
タイトル:「子羊の勝利」
牧師:香川尚徳