「たましいの安らぎ」
皆さんこんにちは、「聖書からのワンポイント」の清水浩治です。今日のお話のタイトルは、たましいの安らぎです。今「アンという名の少女」が放映されていますが、「赤毛のアン」をもとに作られた作品です。見ている方も多いと思いますが、昨年12月12日の放送の中で、讃美歌が流れていました。聖歌という歌集の中でのタイトルは「やすけさは川のごとく」になっています。英語のタイトルはIt is well with my soulです。
ストーリーの中でこの曲が使われた場面は、セバスチャンの妻のメアリーが敗血症にかかり、命の日々が限られている中で、彼女を知る人たちが集まって、メアリーを励ましている状況においてでありました。曲が流れ始めるシーンでは、アンが笑みを浮かべながら歌っていますが、曲の背景から考えますと、本来、喜びながら歌う曲とは少し違うのです。
曲ができた出来事は、1873年にさかのぼります。ホレーショウ・スパフォードというアメリカ人の弁護士、実業家の家族に起こったことでありました。彼は敬虔なクリスチャンで、当時、著名なキリスト教の伝道者のD.L.ムーディーをサポートするために、仕事の合間を見て家族でイギリスへと行く計画を立てていました。家族と一緒に行くはずでしたが、彼の仕事の都合で、彼はアメリカに残り、1871年に起きたシカゴ大火後の都市計画の仕事を済ませて、後から別の船で追いかけるようにしたのでした。
その彼のもとに突然届いた知らせは妻のアナからであり、電報で送られてきた文面にはSaved alone 「私、一人だけが助かりました」でありました。家族の乗った船は、大西洋上で別の船と衝突して、あっという間に海の中へと沈んでいったのでした。
この出来事の前、スパフォード夫妻の4歳の長男が病に倒れ、亡くなるという悲劇が起きていました。そして、落ち込んでいる家族を励ます目的も含めて、この旅行は計画されたのでした。スパフォード夫妻には、4人の女の子がおりましたが、この海難事故で4人とも失ってしまったのです。
イギリスにいる悲しみに打ちひしがれた妻を訪ねるために、スパフォードは船に乗り、イギリスへと向かいます。彼自身も大きな悲しみに包まれている中で、彼の乗った船は4人の娘たちを飲み込んだ海域へと近づいていました。しかし、彼の心は動かされて、この曲の歌詞が浮かんできたのでした。
When peace like a river, attendeth my way, When sorrow like a sea billows roll;
平安が川のように私の歩みに伴う時も、悲しみが海の大波(うねり)のように波立つ時も、私の今、置かれた状況がどのようであっても、
Whatever my lot, Thou hath taught me to say
神であるあなたは、私がこのように告白するように、と教えてくださった。
It is well, it is well with my soul
「私のたましいはゆるぎない」と。
テレビの中では、it is well with my soulが「心穏やか(おだやか)にあれ、何も心配いらないと」と、訳されていました。曲の背景まで調べることはなかったと思いますので仕方がないのですが、メアリーの場合も、スパフォードの場合も心を穏やかにしたり、心配をしなくてもよい状況ではないことは、お分かりいただけると思います。確かにwellという言葉の訳には難しさを覚えます。「私の心は良い」などとは決して言えないのです。意訳にはなりますが、私は、「私のたましいは揺るぎない」「揺らぐことはない」が良いのでは、と考えます。
私はSoulをたましいと訳しました。確かに辞書では意味の一つに「心」がありますが、たましいとは、全人格的なものであり、英語においてはその人自身を意味する言葉でもあります。
Soulは、辞書において宗教的な意味で用いられることが多いとも書かれています。ですから、スパフォードの心は、心情的な部分では、胸が張り裂けるほどの悲しみを感じていますが、彼の神にあってのたましいは、心の根幹の部分では揺るぐことはない、と言えるのではないでしょうか。私たちも状況に左右されることのない「たましいの安らぎ」を得られたら、なんと幸いなことでしょうか。
お時間になりました。また、「聖書からのワンポイント」でお会いしましょう。お聴きいただき、ありがとうございます。
2022.1.14
ラジオ・ティーチング・ミニストリー「聖書からのワンポイント」
「たましいの安らぎ」
牧師:清水浩治
(アメリカにいた時に起きた事故でしたが、チャレンジャーの爆発事故の次の日、様々なニュースの見出しが紹介されていました。Seven souls have perished 直訳すれば、7つのたましいが滅びてしまった、亡くなったと書かれていたものもありました。魂という言葉で、人を表わしている具体例です。)