ショートメッセージ【エステル③】

エステル記3-4章
(その時のために)

1、ハマンの台頭
2、ユダヤ人の危機
3、その時のために

1、ハマンの台頭
 3章1-6節を読みます。

3:1 これらの事の後、アハシュエロス王はアガグびとハンメダタの子ハマンを重んじ、これを昇進させて、自分と共にいるすべての大臣たちの上にその席を定めさせた。
3:2 王の門の内にいる王の侍臣たちは皆ひざまずいてハマンに敬礼した。これは王が彼についてこうすることを命じたからである。しかしモルデカイはひざまずかず、また敬礼しなかった。
3:3 そこで王の門にいる王の侍臣たちはモルデカイにむかって、「あなたはどうして王の命令にそむくのか」と言った。
3:4 彼らは毎日モルデカイにこう言うけれども聞きいれなかったので、その事がゆるされるかどうかを見ようと、これをハマンに告げた。なぜならモルデカイはすでに自分のユダヤ人であることを彼らに語ったからである。
3:5 ハマンはモルデカイのひざまずかず、また自分に敬礼しないのを見て怒りに満たされたが、
3:6 ただモルデカイだけを殺すことを潔しとしなかった。彼らがモルデカイの属する民をハマンに知らせたので、ハマンはアハシュエロスの国のうちにいるすべてのユダヤ人、すなわちモルデカイの属する民をことごとく滅ぼそうと図った。

 以前も説明しましたが、ペルシャ王国は、以前のバビロン王国のように王に権力が集中したトップダウンの組織ではなく、各地の首長たちの能力を重んじて発展していきました。その中でもハマンはかなりやり手の人物であったようです。能力と王の信頼を誰よりも多く受けていました。

 順風満帆のハマンの前に、気に入らない存在が目に入ります、それがエステルの養父モルデカイです。モルデカイは、王の門によくいたことが書かれていますが、これはモルデカイがある程度の名士であることがわかります。当時の平常時には、門の前で会議や社交が行われていました。現在の町議会や商工会、ロータリークラブのようなものだと考えてもよいでしょう。もちろん、王妃になったエステルのことが心配でそこにいることも事実なのですが、仕事をしないで、そのような場に参加できるものは、地位のある富裕層しかできないことです。

 さて、そのような場でモルデカイだけがハマンにひざまずいて敬礼しませんでした。
 ダニエル編でも話しましたが、ユダヤ人にとって、神さま以外を挨拶する以外で、拝する行為は偶像礼拝にあたるからです。ハマンは、自分に敬礼しないモルデカイのことを怒り心頭になるわけです。

2、ユダヤ人の危機
 ハマンは、モルデカイを殺すだけでは納得できず、自分を拝さない神を信仰するユダヤ人そのものを滅ぼそうとします。
 よくよく考えてみれば、放っておいても何の問題にもならないはずなのですが、偉くなると人間はこのようになるといったところでしょうか。
 ハマンは過去、謀略もあったかもしれませんが、彼が、今の地位に上がるまで、やり手であることを考えると、権力や立場が自分の行動を見えなくさせるのでしょうか。

 さて、ハマンは王にユダヤ人排除のために動きます。3章8-11節を読みます。

3:8 そしてハマンはアハシュエロス王に言った、「お国の各州にいる諸民のうちに、散らされて、別れ別れになっている一つの民がいます。その法律は他のすべての民のものと異なり、また彼らは王の法律を守りません。それゆえ彼らを許しておくことは王のためになりません。
3:9 もし王がよしとされるならば、彼らを滅ぼせと詔をお書きください。そうすればわたしは王の事をつかさどる者たちの手に銀一万タラントを量りわたして、王の金庫に入れさせましょう」。
3:10 そこで王は手から指輪をはずし、アガグびとハンメダタの子で、ユダヤ人の敵であるハマンにわたした。
3:11 そして王はハマンに言った、「その銀はあなたに与える。その民もまたあなたに与えるから、よいと思うようにしなさい」。

 王が指輪を渡して法令を作ることを許可するということは、この命令は必ず実行されることを意味します。つまり、ユダヤ人の滅亡は避けられないということです。
 それを聞いたモルデカイはじめユダヤ人たちは悲しみの底にいました。
 4章1-3節を読みます。

4:1 モルデカイはすべてこのなされたことを知ったとき、その衣を裂き、荒布をまとい、灰をかぶり、町の中へ行って大声をあげ、激しく叫んで、
4:2 王の門の入口まで行った。荒布をまとっては王の門の内にはいることができないからである。
4:3 すべて王の命令と詔をうけ取った各州ではユダヤ人のうちに大いなる悲しみがあり、断食、嘆き、叫びが起り、また荒布をまとい、灰の上に座する者が多かった。

 興味深いことは、ユダヤ人が、モルデカイに対して「何ということをしてくれたんだ」という人やコメントを記していないとことです。もちろん、何人かはいたかもしれませんが、ごく少数だったことでしょう。
 モルデカイは非常に聡明な人物です、それは2章の後半で知恵をもって王の暗殺計画を防いだ技量からも見えることができます。しかし、ハマンを拝することは、しっかりと拒否しました。そのことをユダヤ人たちは承認しているということです。

 これが当時のユダヤ人たちの神さまへの信頼であることを覚えていただきたいです。信仰が、捕囚されて後に成長したのです。

3、その時のために
 王の門の前で悲しむモルデカイに、エステルは使いを出して、「これは何事ですか。」と聞きます。モルデカイは王宮にいて何も知らないエステルにすべてを伝えます。そして、あなたが王のもとに行って、ユダヤ人のために王にあわれみを請い、命令を取り下げるように頼みます。エステルはモルデカイに言います。4章11節を読みます。

4:11 「王の侍臣および王の諸州の民は皆、男でも女でも、すべて召されないのに内庭にはいって王のもとへ行く者は、必ず殺されなければならないという一つの法律のあることを知っています。ただし王がその者に金の笏を伸べれば生きることができるのです。しかしわたしはこの三十日の間、王のもとへ行くべき召をこうむらないのです」。

 エステルは、そのようなことをすると自分のいのちの危ないことをモルデカイに素直に伝えます。その気持ちはよくわかります。モルデカイにとっても苦肉の判断であったに違いありません。しかしモルデカイはこう返答します。
 4章13-14節を読みます。

4:13 モルデカイは命じてエステルに答えさせて言った、「あなたは王宮にいるゆえ、すべてのユダヤ人と異なり、難を免れるだろうと思ってはならない。
4:14 あなたがもし、このような時に黙っているならば、ほかの所から、助けと救がユダヤ人のために起るでしょう。しかし、あなたとあなたの父の家とは滅びるでしょう。あなたがこの国に迎えられたのは、このような時のためでなかったとだれが知りましょう」。

 モルデカイは、自分の命を心配するエステルに対して、神さまを信じるユダヤ人としてのアイデンティティを伝えています。
 一人称で物事を考えるのではなく、死を待つユダヤ人としての三人称のアイデンティティです。思えば、望む望まないにかかわらず、王妃として歩むエステルにとって、自らの起源や真実に頼みにするものは何かと問われた瞬間です。

 それは、いつの時代も同じかもしれません。特に困難な時、神の民の神への信頼に根差した在り方こそが最後まで奮い立たせてくれる力となるのです。自分の知恵や力が届かない困難ことは人生には必ず起こります。どのように正当なことをしても報われないことも多々あるのが人生です。

 しかし、それはこの時のエステルと同じように、神の大きな力によって超え、後の平安のための、そして神を信頼することの幸いを教えてくれるためのものかもしれません。その証は、多くの人に信仰とともに継承されてきたのですから。

 最後にエステルの返答とモルデカイの行動を見て終わります。4章16-17節です。

4:16 「あなたは行ってスサにいるすべてのユダヤ人を集め、わたしのために断食してください。三日のあいだ夜も昼も食い飲みしてはなりません。わたしとわたしの侍女たちも同様に断食しましょう。そしてわたしは法律にそむくことですが王のもとへ行きます。わたしがもし死なねばならないのなら、死にます」。
4:17 モルデカイは行って、エステルがすべて自分に命じたとおりに行った。

 ここに、なんの駆け引きもありません。エステルは、ただ、命じられた通り行いました。

2024年1月21日(日)
ニホン・ネットキリスト教会
メッセンジャー:香川盛治

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