「スズメのサンタクロース」
皆さんこんにちは、「聖書からのワンポイント」の清水浩治です。
今月はクリスマスのある月ですね。
今日のお話のタイトルは“スズメのサンタクロース”です。
私が子供の頃、お風呂を沸かすのに当時は薪を使っていましたが、薪を燃やしてお湯を沸かす時に、風呂釜からブリキの煙突が伸びていて、それを壁から外に出し、煙を放出していました。
ある日のこと、風呂釜のあたりから、パタパタ、パタパタという聞きなれない音が聞こえてきました。それはいつまでたっても止みません。怖さを覚えながらも近づいて、懐中電灯で釜の中を覗いてみると、なんとスズメがいるではありませんか。前の日にお風呂を沸かしましたが、時間が経っていたので薪を燃やした灰はあるものの釜の中は全く熱くありませんでした。
もちろん、スズメは自分でそこから脱出することはできません。手を恐る恐る伸ばしてスズメをつかまえて、外へと逃がしてあげました。煙突の先の部分は形状がTの字ようになっていて、何の理由かわかりませんが、煙突に入り込み、そのまま下へと落下したのでした。クリスマスに関連してサンタクロースの話を聞いたことがあり、サンタクロースは煙突から入ってきて、子供たちにプレゼントを置いていくとのお話でしたが、煙突から入ってきた我が家の珍客は、スズメのサンタクロースでした。なにもプレゼントは持ってきませんでしたが。
教会や聖書、そしてイエス・キリストと関係のないところで、クリスマスの様々なイベントや人物が存在します。その典型例がサンタクロースです。セキュラー・クリスマスという言葉を使いますが、宗教的要素のないクリスマス、非宗教的なクリスマスという意味でこの言葉を使います。
かつて、日本が鎖国をやめて開国した時に、西欧から様々なものが入ってきました。イエス・キリストの降誕、誕生を祝う聖書の内容に則したクリスマスも、非宗教的なクリスマス、サンタクロースも同時に入ってきたのでしょう。
サンタクロースは、セイント・ニコラス(ニコラオス、ニコラウス)という人物から名前が来ています。セイントとは、一般的には「聖人」と訳されています。キリスト教のいくつかの教派においては、聖人が礼拝の対象となることがあります。また聖人と認定されるためには、その人物が何らかの奇跡を起こした事実がなければいけない、と言われています。しかし、聖書の中におけるセイント、日本語訳の「聖人」は、本来聖書では「聖徒」(聖書の聖と、学校の生徒の徒)と訳され、キリストを信じているクリスチャンのことを言います。
Hagios(ハギオス)という言葉が使われ、「きよい」の意味があります。なぜそうなのかと言いますと、キリストの内にあってきよめられている、キリストの十字架のゆえに神の前における罪が赦され、神から聖いものとしてみなされているゆえであります。
お話をサンタクロースに戻しましょう。大変わかりやすく、それでいて大変深い内容の説明をネット上で見つけました。worldforksong.comというサイトにおいてでありますが、煙突から入るサンタクロースが描写されたのが、1800年代初頭のアメリカの新聞においてでありました。これが現代の人がイメージするサンタクロース、すなわち、空飛ぶトナカイのソリに乗ったサンタで、屋根に降り立ち、煙突から家に入っていくサンタクロースであります。
歴史をさかのぼり、サンタクロースの原型と言いましょうか、St.Nicolausについて見ていきましょう。1425年頃に描かれた絵のようですが、そこには聖ニコラウスが、困っている人の家に窓から金貨を投げ入れている様子が描かれています。
ニコラウスに関してこれに類する次のようなストーリも聞きます。「ニコラウスが困窮している家族を知り、このままだとその家の娘たちが嫁げずに売られてしまう可能性があるのを知って、その家の屋根に上って煙突から金貨を投げ入れました。その金貨が煙突の下につるしてあった靴下に偶然入って彼らを助けたのです。」ここまでくると、現代のサンタクロースに話を合わせるために尾ひれがついた、と言わざるを得ないような気がいたします。歴史的な資料は現存せず、証明できるものはありません。
ここで、参考にしたサイトの筆者が面白く、興味深い推察をしています。ニコラウス伝説では、ニコラウスが煙突から金貨を投げ入れたわけでもなく、自ら煙突の中に入っていったわけでもありません。ところが、煙突とプレゼントを結びつける話がイタリアにあって、現在でもその話は人々の間で語られているそうなのです。
それは、イタリアに古くから伝わるベファーナ伝説というものです。ベファーナはイタリアに伝わる魔女の一種です。エピファニー(エピファニア)公現祭(神が世に現れたのを記念する日)の前日までに、一年間良い子であった子供には素敵なプレゼントを、悪い子だった子供には、靴下に炭を入れていくと言われているそうです。
聖ニコラウスの伝説とベファーナ伝説が融合すると、まさにサンタクロースの話になってくる(ネットの記事の著者の見解)わけですが、ローマ帝国のミュラにいたニコラウスとイタリアには、距離における隔たりがあるのです。
ところが、11世紀後半、東ローマ帝国領ミュラ(現在のトルコ)がイスラム王朝のセルジューク朝に征服された際、聖ニコラウスの遺体がイタリアのバリへと移送されていたのです。そして、聖ニコラウスは、イタリアでも巡礼の対象になっていたそうです。ここで聖ニコラウスの伝説とベファーナ伝説が融合してサンタクロースのお話になった、とworldforksong.comでこの内容を記述した方が推察した通りであるとすると、当時のイタリア・ルネッサンスの波に乗ってこの話がヨーロッパに広がり、オランダでシンタクロースと呼ばれていた聖ニコラウスの伝説が、いわゆる清教徒たちのアメリカへの移住によって、サンタクロースのお話がアメリカにももたらされた、と話が繋がっていくことになるのです。
証明しようもないお話ですからそれ以上、歴史的な流れは調べようもありません。ただ、このようなお話、特に聖「誰それ」、という名前がついて伝説が残っている人は、ニコラウスだけではありません。St.Valentine もそうですし、St.Patrickという人物も歴史上存在した人で、伝説が残っています。彼らの共通点は、人を助けた事実ではないでしょうか。
クリスマスの近づくこの時季、私たちを助けに、いや、私たちを救うためにこの地上に現れてくださったイェス・キリスト。この方こそ、クリスマスにおいて語られるお方なのです。
2022.12.9
ラジオ・ティーチング・ミニストリー「聖書からのワンポイント」
タイトル「スズメのサンタクロース」
牧師:清水浩治