「剣を取る者はみな剣で滅びる」

 皆さん、こんにちは。「聖書からのワンポイント」の清水浩治です。今日のお話は「剣を取る者はみな剣で滅びる」であります。

 毎日、ウクライナ情勢が伝えられてきますが、本当に心が痛いです。ウクライナという独立国が保たれ、守られるように心から願い、祈るばかりです。このニュースを聞いた時に、私は今から50年以上も前の「プラハの春」を思い出していました。当時、私は小学校の5年生でしたが、テレビ画面から伝えられる当時ソ連のプラハへの侵攻を覚えております。

 戦車の前に人が立ちはだかったり、戦車の前に寝そべったりしていたのを記憶しています。衝撃的だったので、記憶にとどまっていたのだと思います。

 新型コロナ前の2019年に、生まれて初めて大陸ヨーロッパ(島国を除く)を訪れました。最初に行ったところはバルト三国でありました。昔からヨーロッパの国々を訪ねてみたいという思いはありましたので、訪れるところ、どこにおいても、その歴史、文化、習慣など全てが興味深かったです。

 そして、そこで学んだ事実は、歴史の中でヨーロッパの国々の人々が経験した外国からの侵攻でありました。ラトビアの国旗は、赤にも見えるチョコレート色の帯が上下にあり、それを挟むように白い帯があるデザインです。

 1280年頃の戦争に関してリヴォニア年代記に書かれているとのことですが、あるラトビアの兵士が戦いで瀕死の重傷を負い白い布にくるまれた際、その布の両端が血で赤く染まった、血染めの包帯に由来するのがラトビア国旗なのです。

 バルト三国をバスで旅していた時に気づいたことですが、EUに加盟しているがゆえに、バスが国境を通過しても何も手続きはしませんでした。ただ、一度バスが国境で止まり、運転士さんが小さな建物のところに行って税金を払っただけでありました。過去の負の遺産として目の当たりにしたのが、国境のソ連時代の検問所跡でありました。
 
 島国に住む私たちからすると、一夜にして外国が攻め込んできて、目が覚めると外に戦車がいることなど想像もつきません。しかし、その可能性があるという怖さを、旅をしながら肌で感じました。実際リトアニアは、ロシアとの間で領有権を争っていたロシア名カリーニングラードという地域があり、EU加盟を急ぎたいという理由で、その地域を諦めた経緯があります。

 今回のロシアのウクライナ侵攻で、ある専門家が、この飛び地のカリーニングラードに言及し、飛び地の部分からベラルーシにつながっている僅かな地域を押さえれば、バルト三国は、ロシアに近いベラルーシとロシア以外、他の国と接する国境がなくなり、それを利用してこれらの国々を再び支配下におさめたいという狙いもある、と言っていました。私たちの生きる現代の国際法を無視し、傍若無人に外国を武力で占領、自分たちの属国にしようなどという考えがまかり通ることがあってはなりません。

 皆さんは、チェコの伝統として、マリオネットが盛んなのをご存じでしょうか。操り人形を売っているお店が、街の中にも見られます。しかし、チェコの文化、工芸の領域に限られるお話ではなく、この人形の存在にも過去の悲しい歴史が絡んでいるのです。チェコでは、かつて外国に攻められて支配されていた時に、母国語のチェコ語を話すことが許されませんでした。しかし、伝統的な人形劇に限って、例外的にチェコ語で話すことが許されたのでした。

 ロシアのプーチン大統領に関して、ウクライナのゼレンスキー大統領は、地獄に落ちるという言葉を使って、厳しい批判をしています。私は、マタイの福音書の中で、キリストが述べている言葉が思い浮かびました。キリストを守ろうと共にいた者が剣を抜いて、キリストを捕えようとした者に刀を振るいました。それに対して、キリストは「剣をもとに納めなさい。剣を取る者はみな剣で滅びます。」と語ったのです。剣の力で無理やりにことを進めようとする者は、結果的にそれが自分の身に降りかかってくるのです。かつてのルーマニアのチャウシェスク大統領のように、であります。

 お時間になりました。また来月のこの時間、聖書からのワンポイントでお会いしましょう。お聴きいただきありがとうございます。

2022.3.11
ラジオ・ティーチング・ミニストリー「聖書からのワンポイント」
タイトル「剣を取るものはみな剣で滅びる」
牧師:清水浩治